高齢の方のお宅を片付けていると、いつも同じ場所で手が止まります。押し入れの上の、天袋です。
何十年も開けられていない箱が、そこにはたくさん眠っています。お子さんの書き初め、しつけ糸のついたままの着物、どなたかの結婚式の引き出物。蓋を開けた瞬間、その家の歳月がふわっと立ちのぼります。ご本人にとっては「いつか片付けなければ」と思い続けてきたものたちです。けれど、片付けるにも手放すにも、体力と気力がいります。年を重ねるほど、天袋は遠くなる。あそこは、手が届かなくなった思い出の置き場所なのだと思います。
その一方で、最近の現場では、別の景色を見ることが増えました。
いくつかのお宅で、玄関から居間へ続く廊下に通販の段ボールが未開封のまま置かれ、台所には買ったばかりらしい調理器具が袋のまま並んでいる光景を見かけました。しかも、よく似たものがいくつも。おたまが何本も、同じようなお鍋がみっつ、といった具合です。
毎日決まった時間に買い物へ出かけるのは、悪いことではありません。むしろ良い習慣です。歩きますし、店先で人とも言葉を交わします。ただ——出かけたら、何か買ってしまう。そして、何を買い置きしたか思い出せない。これは、現役世代の私たちにも起こる身近なことです。冷蔵庫を開けたら同じ調味料が二本あった、という経験は、誰にでもあるのではないでしょうか。
違うのはただひとつ。「あら、またおんなじの買っちゃった」と一緒に笑ってくれる人が、そばにいるかどうかです。

だから、ご家族の皆さまにお願いがあります。実家に顔を出したら、玄関の段ボール、台所、冷蔵庫のなかを、それとなく見てみてください。同じものが増え始めていたら、どうか責めないでください。一緒に手を動かしながら、「これ、もうおうちにあるよ」とやんわり伝える。それだけで十分です。片付けはひとりだと重い作業ですが、誰かと一緒なら、思い出話になります。
同じことが続き、暮らしに困りごとが出ているようなら、お住まいの自治体のもの忘れ相談窓口や、かかりつけの医療機関に相談してみるのも一つの方法です。同じものが増えることだけで判断はできませんが、日々の変化に気づくきっかけになる場合があります。
箱や買い置きが増えると、通り道が狭くなったり、食品の期限を確かめにくくなったりする場合があります。整理の際は、残すもの、再利用できるもの、手放すものを一緒に確認し、廃棄物は自治体のルールや許可業者との連携により適正に対応します。まだ使えるお鍋を手放す場面では、本当にもったいないなあ、と思います。それはたぶん、お金の話だけではなくて。
少しでも、おうちに行ってあげてください。
天袋の思い出話を聞くついでで、かまいませんから。

ご実家の様子が気になり始めたら、片付けのことでも、その前の見守りや生前整理やご相談の流れのことでも、どうぞお気軽にお声がけください。無料見積りフォームまたはLINE公式アカウントからご相談いただけます。
筆者: 株式会社ノース・ポール 現場スタッフS/監修: 株式会社ノース・ポール(医師が経営する遺品整理・生前整理の会社/有資格スタッフが対応)/最終更新日: 2026年7月13日


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