遺品整理の仕事を、もう何年もやっている。
だから片付けには、それなりの自信があった。お宅に伺い、仕分けて、梱包し、搬出の段取りを整える。仕事の現場では、決められた時間の中で、ご家族に確認しながら作業を進めていく。段取りと人数を考え、一つずつ終わりへ近づけていく仕事なのだ。
ところが、である。
私はこれまでに、身内を亡くして、その片付けをしたことが四回ある。仕事ではなく、家族の一人としての片付けだ。プロなのだから、さぞ手際よく進んだだろうと思われるかもしれない。進まなかった。四回とも、見事なくらい進まなかった。
見たことのある湯呑みが出てくる。子どもの頃、さんざん食卓で見た絵柄だ。手が止まる。旅行土産の、なんだかよく分からない木彫りの熊が出てくる。また止まる。私の字で書かれた古い年賀状が出てきたときには、廊下に完全に座り込んでしまった。

作業は進まない。当然だ。気が散って、どうしようもない。一日が二日になり、二日が三日になり、気がつけば一週間が経っていた。プロが、である。
そしてうすうす気づいてもいる。これはたぶん、私の部屋がいつまでも片付かないのと、同じ理屈なのだ。
それなのに、仕事の現場は一日で終わる。そりゃそうだ、他人のものだから——と書くと冷たく聞こえるかもしれない。そうではない。正しくは、距離があるから、だ。距離というのは、プロの道具箱に入っている、大事な道具の一つなのだと思う。気持ちに寄り添いながらも、確認すべきことを落ち着いて確認する。そのための距離である。医師が経営する会社で働いていると、記録と確認の大切さを考える機会が多い。
ただし、距離を置いたまま、何でもかんでも廃棄に回すのなら、この仕事はずいぶん簡単になる。そうはいかない。写真。通帳。手紙。仏具。誰かの字で書かれたもの。そういう品の前では、いったん距離をたたむ。これが自分のものだったら、と考える。そこだけは、あの一週間かかる私に戻るのだ。もっとも現場で本当に一週間かけるわけにはいかないから、手は動かしたまま、心の速度だけを落とす。

要するに、メリハリである。飛ばすところは飛ばし、ゆっくりやるところはゆっくりやる。緩急をつけて、今日もどこかの家を片付けている。
それにしても、ああ、部屋が片付かない。
——私の部屋の話だ。
(スタッフS)
ご自身では手が止まってしまう片付けも、どうぞご相談ください。思い出の品は、ご家族に確認しながら丁寧に扱います。無料見積りフォームまたはLINE公式アカウントからご相談いただけます(受付時間 10:00〜18:00)。ご相談の流れはこちらをご覧ください。
筆者: 株式会社ノース・ポール 現場スタッフS/監修: 株式会社ノース・ポール(医師が経営する遺品整理・生前整理の会社/有資格スタッフが対応)/最終更新日: 2026年7月13日


コメント